血液検査の結果、ヘマトクリット検査値が基準値の範囲よりも高くなっている場合について確認しておきましょう。
特に前項のヘマトクリット基準値一覧表の赤色の部分に当たる要注意の範囲を示した場合は、体調の悪化や幾つかの疾患の可能性を検討していく必要があります。
ヘマトクリット検査だけではもちろん疾患の種類までは特定できませんが、「赤血球比率」が増加している場合に疑われる主な疾患には以下のような疾患があります。
赤血球比率が増加している場合に疑われる主な疾患
★赤血球増加症
★真性他血症
★ストレス性疾患
★過度の喫煙によるニコチン依存症
★脱水症状状態
脱水症状状態の場合は体内の血液中に含まれる水分が低下している状態である為、どうしても濃度比率が高くなってしまいます。
ですから風邪を引いている時や運動後等の脱水症状を発症している可能性がある時の検査は適切な数値を測定することはできません。
ヘマトクリット比率は前述した脱水症状などを原因とする体内の水分量の割合や月経などの有無によっても比率に変化が生じます。
またヘマトクリット比率は、1日の中でもその比率に変動が生じる事を覚えておく必要があります。
このように1日の中で血液成分やホルモン分泌量などに変化が生じることを日内変動と呼びます。
尚、ヘマトクリット検査の傾向としては、赤血球比率の日内変動は
★朝方はやや高い
★夕方以降はやや低い
という傾向が確認されております。
ですから計測する時間帯によっても基準範囲がやや変化することを考慮して診断することが大切です。
しかし比率に著しい差が生じることはありませんので時間帯の違いによるヘマトクリット比率の日内変動は過度に神経質に心配する必要はありません。
数値の変動は時間帯による変動だけではなく検査を行う際に座位で血液を採取した場合と、伏位で血液を採取した場合でも変化が見られます。
測定時の姿勢によっても比率に変動が生じてしまうのです。
ですからヘマトクリット比率は測定時の姿勢などによっても「高い数値」を示すケースもあれば「低い数値」を示すケースもあるのです。
時間帯による日内変動とともに大きな影響を受けることはありませんが、ここでは「測定時の姿勢」によって検査値に影響を受ける可能性がある点を覚えておけば問題ありません。
ここまでのポイントを踏まえると、定期的にヘマトクリット血液検査を行う必要性がある場合は、出来る限り測定時間の統一を図り、更に測定環境や測定時の姿勢も統一することで正しい数値の推移を確認しやすくなるということは言えるでしょう。
新生児の赤ちゃんのケースを見ていきましょう。
まだ免疫機構が完成していない赤ちゃんの場合は、ヘマトクリット濃度はやや高い数値を示す傾向にあります。
赤ちゃんは母乳に含まれる成分で守られており免疫機構の主力である白血球数自体はまだ少ないことが原因です。
しかし、赤血球比率がもし65%以上の数値を示した場合は「新生児多血症」と呼ばれる疾患の可能性を検討していくことになります。
新生児多血症は赤血球比率が高いことによってチアノーゼ症状などを発症する赤ちゃん特有の疾患です。
呼吸数が過剰に多い場合や赤ちゃんの由縁でもある出生直後の赤い色が変わってこない場合は専門医に相談してみましょう。
赤ちゃんの病気は過剰に心配してしまうものですが、実際に多くのケースでは成長と時間の経過によって比率も回復してきます。
担当の医師としっかり観察を行いながら見守っていくことが大切ではありますが過度な心配は必要ありません。
~ポイントのまとめ~
★赤血球の比率が上昇している場合は幾つかの疾患の可能性が検討される
★1日の中でも数値の変動が見られる(日内変動)
★新生児の場合、赤血球比率が65%以上の場合は新生児多血症の可能性を検討する