

腫瘍マーカー検査は、文字通り腫瘍の有無の確認、及び尿・血清の成分の確認を行う検査です。
腫瘍は全身のどの組織にも発生する可能性があるため、腫瘍マーカー検査は、これらの各種検査の総称となります。
今回は、腫瘍マーカー検査の種類、各種検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。
目次

腫瘍マーカー検査とは、腫瘍の有無の確認やがん細胞の種類を特定する為に特殊の腫瘍マーカーを使用して行われる血液検査及び尿検査のことです。
がん細胞は成長すると特殊の「たんぱく質」・「酵素」・「ホルモン」などの物質を生成する為、その成分を検出することで「がん細胞」の存在を確認することが可能となります。

がん細胞は全身のあらゆる部位で発生する可能性をもつ細胞です。
また、対象となる臓器や器官の治療後、他の部位へ転移するケースも多く見られるのが、がん治療の完治が難しい原因となっております。
その為、各臓器ごとに様々な種類のがんを発症する可能性については誰にでもあることと把握しておく必要があります。
尚、代表的ながんの種類には以下のようなものがあります。
恐らく、一度は各種名称を耳にしたことがあるかもしれません。
| 【主ながんの種類一覧】 | |
|---|---|
| 消化器系 | 食道がん | 
| 胃がん | |
| 十二指腸がん | |
| 小腸(空腸・回腸)がん | |
| 大腸(結腸・直腸)がん | |
| 臓器系 | 肺がん | 
| 子宮がん | |
| 肝臓がん | |
| 卵巣がん | |
| 前立腺がん | |
| 腎臓がん | |
| 乳がん | |
| 膀胱がん | |
| 脾臓がん | |
| 脳腫瘍 | 髄膜腫 | 
| 下垂体腺腫 | |
| 神経膠腫(グリオーマ) | |
| 中枢神経系原発悪性リンパ腫 | |
| 神経鞘腫 | |
| 頭蓋咽頭腫 | |
腫瘍マーカー検査も、このように数多いがん細胞の種類に対応する為に様々な種類の腫瘍マーカーが存在します。

腫瘍マーカー検査の種類は実に「数十種類」の検査項目があります。
この腫瘍マーカー検査を大きく分類すると
★尿の成分を検査する尿検査
★血清の成分を検査する血液検査
の2種類の検査に分類することが可能です。
次項からは、代表的な検査項目の基準値の範囲も兼ねて確認してみます。
ではまずは実際に腫瘍マーカー検査にはどのような種類の検査項目があるのか?について尿を検体とする検査と血清(血液成分)を検体とする検査にわけて確認してみましょう。
以下に分類別の検査項目の種類をまとめておきますのでご参照ください。
まずは尿を検体とする代表的な3つの検査項目です。
| 【尿を検体とする腫瘍マーカー検査項目一覧】 | |
|---|---|
| 名称 | 略称 | 
| 塩基性フェトプロテイン | BFP | 
| デオキシピリジノリン | Dpyr | 
| ベンスジョーンズプロテイン | BJP | 
続いて血清(血液成分)を検体とする検査項目ですが、血清に関してはかなりの項目がある為、今回は代表的な検査項目と略称をまとめております。
| 【血清を検体とする腫瘍マーカー検査項目一覧】 | |
|---|---|
| 名称 | 略称 | 
| 塩基性フェトプロテイン | BFP | 
| 免疫抑制酸性たんぱく | IAP | 
| αフェトプロテイン | AFP | 
| がん胎児性抗原 | CEA | 
| 組織ポリペプチド抗原 | TPA | 
| CA19-9 | CA19-9 | 
| DUPAN-2 | DUPAN-2 | 
| SPan-1抗原 | SPan-1 | 
| エラスターゼ-1 | IRE | 
| PIVKA-Ⅱ | PIVKA-Ⅱ | 
| シアリルLex-i抗原 | SLX | 
| NCC-ST-439 | NCC-ST-439 | 
| BCA225 | BCA225 | 
| CA15-3 | CA15-3 | 
| 神経特異エラノーゼ | NSE | 
| 扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原) | SCC | 
| ガストリン放出ペプチド前駆体 | ProGRP | 
| シフラ | CYFRA | 
| 前立腺酸性フォスファターゼ | PAP | 
| γ-セミノプロテイン | γ-Sm | 
| 前立腺特異抗原 | PSA | 
| CA125 | CA125 | 
| CA602 | CA602 | 
| シアリルTn抗原 | STN | 
| CA72-4 | CA72-4 | 
| CA130 | CA130 | 
| 骨型アルカリフォスファターゼ | BAP | 
| 血清L3分画比(AFP) | AFP | 
CEA腫瘍マーカー検査のCEAとは「がん胎児性抗原」の略称です。
CEA腫瘍マーカー検査では、
★大腸がん
★胃がん
★胆管がん
★膵臓がん
などのがん細胞がある場合に高い数値を示します。
但し、他の臓器のがんや「肝硬変」・「胃潰瘍」・「肝炎」などを発症している場合でも数値が高くなる為、CEA腫瘍マーカー検査は単体でがんの特定ができません。
| CEA腫瘍マーカー検査の基準値の範囲一覧表 | |
|---|---|
| 検査数値 | 単位(ng/ml) | 
| CEA基準値の範囲 | 5.0以下 | 
| やや高値の範囲 | 5.0以上~9.9以下 | 
| がんの危険性が検討される範囲 | 10以上 | 
CA19-9腫瘍マーカー検査の「CA19-9」とは
★消化管
★唾液腺
★膵管
★子宮内膜
などの細胞に非常に微量に存在する「シリアルルイスA糖鎖」と呼ばれる物質の1種のことを指します。
CA19-9腫瘍マーカー検査では、「卵巣がん」・「消火器がん」・「膵臓がん」などのがん細胞がある場合に高い数値を示します。
但し、他の臓器のがんや「胆石」及び「膀胱炎」などを発症している場合でも数値が高くなる為、やはりCA19-9腫瘍マーカー検査単体でがんの特定はできません。
| CA19-9マーカー検査の基準値の範囲一覧表 | |
|---|---|
| 検査数値 | 単位(U/ml) | 
| CA19-9基準値の範囲 | 37.0以下 | 
| やや高値の範囲 | 38以上~99以下 | 
| がんの危険性が検討される範囲 | 100以上 | 
AFP腫瘍マーカー検査のAFPとは「αフェトプロテイン」と呼ばれる血清たんぱくの略称です。
αフェトプロテインは通常、健常な成人の血液中には存在しません。
しかし主に肝臓がんを発症した可能性のある患者の血液からは多くの「αフェトプロテイン」が確認される傾向にあります。
AFP腫瘍マーカー検査では、「肝臓がん」のがん細胞が存在している可能性が高い場合に高い数値を示す傾向にあります。
但し、他の臓器のがんや「肝硬変」・「肝炎」などの肝機能障害及び肝臓に関与する疾患を発症している場合でも数値が高くなるケースが多い為、AFP腫瘍マーカーの検査結果が仮に陽性反応を示したとしても、肝臓がんを発症していることが特定されるわけではありません。
| AFP腫瘍マーカー検査の基準値の範囲一覧表 | |
|---|---|
| 検査数値 | 単位(ng/ml) | 
| AFP基準値の範囲 | 10.0以下 | 
| やや高値の範囲 | 11以上~99以下 | 
| がんの危険性が検討される範囲 | 100以上 |